グッドイヤーウェルテッド製法について
代表的な靴の製法であるグッドイヤーウェルテッド製法(以下グッドイヤー)について書いていきたい。
概要
ウェルトを介してアッパーとアウトソールを縫い付けることで、アッパーを傷めずにソールの交換を可能としたウェルテッド製法(ハンドソーンウェルテッド製法)のすくい縫い工程を機械化した製法。
現代紳士靴の本流であるイギリス靴の代名詞的製法だが、考案したのはアメリカ人のグッドイヤーさん。
良い『経年変化をする』→『グッドイヤー』的なイメージを持っていた(意味不明)が、全く違った。
アウトソールの交換性に優れる
ウェルテッド製法共通の特性として、ソール交換に最も耐えられることが挙げられる。
アッパーに負担なくソールを交換できることは、間違いなくウェルテッド製法最大のメリットだ。
しかし、現代日本ではこのメリットは実質意味を為さないと言い切ろう。
何故なら靴好き達は数多くの靴をローテーションするため、一足を複数回オールソール交換することは稀だからだ。(稀だと容易に想像できるからだ。)
更に頻度高く、比較的雑な環境で使用する靴にはハーフラバーを張ったりする。
ソールを交換できることが強みなのにソールを守る、これほど本末転倒なことがあろうか。
え?僕?仕事で使う靴?そりゃあ貼るさ。小雨とか気にしたくないし!
雨に比較的強い
アウトソールが靴の外部に露出した部分(コバ)と縫われているため、糸からしみ込んだ水が靴内に直接浸透しない。
雨には比較的強い強い製法と言えるだろう。
厚い中物
グッドイヤーは工程の機械化により中物に厚みを持たさざるを得なくなった。
良い点としてはクッション性の向上ももたらしたが、一方でソールの返りは悪くなり、特に履き始めは固い履き心地となった。
また最大のデメリットとして中物が沈み込むことが挙げられる。
これは売り手側は『あなただけの一足になります』といったように謳い文句としているが、とんでもない悪魔の顔を秘めている。
それはサイズ感が変わることだ。
グッドイヤーの靴のサイズ選びはただでさえ困難な靴のサイズ選びを5割増しにしている。
靴好きの隠れた最大の敵と言っても差し支えないほどだ。
総評
と、たまにこのブログでは好きなものを貶めて、最後に持ち上げる流れを用いるが、今回も御多分に漏れず。
いろいろ言いたい点はあるが、グッドイヤーの靴は次の一点において他の製法の追随を許さない。
それは『だんだん良くなる』ということだ。
思えばきっと男の子はこの『だんだん良くなる』というフレーズに須らく魅了されるものなんだと思う。
使い込むごとに劣化していくのではなく、『だんだん良くなる』。
おお~心の底が暖かくなるのを感じる。
固い履き心地が柔らかくなり、アッパーや中物は足形に変形する。
実は最初がダメなのかもしれないが、そんなことは関係なく、間違いなく『だんだん良くなる』。
その事実が高価なものであっても使用することに躊躇いをなくし、使用頻度を上げ、そして愛着を増させるのである。
だからね、最初に丁度良くて、緩くなったら中敷きで調整する履き方はグッドイヤーの魅力を削いでしまっているんだよ。
それでは『だんだん良くなる』ではなく、だんだん劣化にしてしまうんだ。
だからグッドイヤーはタイトフィットから履きならす、それ一択。
この魅力だけで趣味の世界で幅を利かせているのだから。(嘘)